
親知らずがあると、歯並びが悪くなりませんか?抜くべきですか?
といった質問を患者さまからいただくことがあります。
結論からお伝えすると、
- どんな生え方をしていて
- アゴの大きさがどのくらいで
- かみ合わせや歯並びに悪影響が出ているか否か
によって答えが変わります。
とはいえ、この回答だと「じゃあ、結局どうしたらいいの?」となってしまいますよね。
そこで本記事では、日本矯正歯科学会・認定医の下元が
- 親知らずで歯並びは変わるかについて
- 親知らずを抜歯すれば歯並びは治るのか
- 矯正治療前に必ず親知らずの抜歯が必要になるか
- 矯正治療時に親知らずを抜歯しないメリット・デメリット
- 親知らずを抜くなら若いうちが良い理由
の順に親知らずと歯並びの関係を一般の方にもわかりやすく解説していきます。



「歯並びのために親知らずを抜こう!」と考えている方は、ぜひ参考にしてくださいね。
下元 康英(しももと やすひで)
大阪(梅田)・東京(新宿)の2院で理事長と矯正担当医を兼務。
患者さま利益を追求した治療をするために、治療の長所だけでなく欠点も丁寧に伝えるカウンセリングに力を入れている。


日本矯正歯科学会・認定医
オランジェ矯正歯科グループ理事長
親知らずで歯並びが変わる影響は無視できない


医学的には、親知らずがあるからといって必ず歯並びが悪くなるとは言い切れません。
しかし、
- 下アゴが小さく親知らずが生えてくるスペースがない
- 親知らずが横向きや斜め方向に生えて、前の歯を後ろから押している
- 歯肉や骨に埋まって、一部でも歯が露出している
などの場合は、歯並びにも悪影響が出てくるケースが多いでしょう。
具体的には、
- 前歯の向きが変わる
- 歯並びがデコボコになる
などの問題が発生する可能性が高くなります。
歯並び以外にもある親知らずの悪影響
歯並びにも悪影響を及ぼすような親知らずは、
- 虫歯や歯周病(痛みや腫れ)
- 口臭
- 顎関節症
といった健康被害も引き起こす可能性が高くなります。
なぜなら、歯並びにも影響を及ぼすような親知らずには、
- 磨きにくく汚れが溜まりやすい
- 歯並びやかみ合わせを悪化させて、アゴの負担を増やす
といった特徴があるからです。



では次に、親知らずを抜歯すれば、歯並びは治るのかについて解説していきますね!
Q.親知らずを抜歯すれば悪くなった歯並びは治る?


A.残念ながら、一度悪くなってしまった歯並びは親知らずを抜歯しても治りません。
歯並びを治すためには、矯正治療を受けていただくしかないのです。
ただし、歯並びに悪影響を与える親知らずを抜歯することで、これ以上歯並びが悪くなるのを防げます。



では次に、矯正前には必ず親知らずの抜歯が必要になるかについてお話していきますね。
Q.矯正治療前に必ず親知らずの抜歯が必要になるの?
A.矯正前に、必ず親知らずの抜歯が必要になるわけではありません。
なぜなら、
- 親知らずを残す代わりに悪い歯を抜歯する
- 親知らずを矯正治療時の固定源として利用する
- 矯正治療後に親知らずを抜いて抜歯のリスクを減らす
といった治療法もあるからです。
また、
- 上下左右4本の親知らずがまっすぐ生えている
- かみ合わせや歯並びに悪影響が出ていない
など問題が起きていない親知らずについては、無理をして抜く必要もありません。



むやみに親知らずを抜くのではなく、まずは矯正の担当医に相談してみましょう。
各歯医者で治療方針も違うので、納得できない場合にはセカンドオピニオンを利用するのもおすすめですよ!
では次に、矯正治療時に親知らずを抜歯しないメリット・デメリットを紹介します。
【親知らずと歯並び】矯正治療時に抜歯しないメリット・デメリット


親知らずと歯並びを考えた上で、矯正治療時に抜歯しないメリット・デメリットは、以下のとおりです。
メリット
矯正治療時に親知らずを抜歯しない主なメリットは、
- 抜歯時の身体・心理的負担を無くせる
- 抜歯後の痛みや腫れを感じずに済む
- 抜歯時のトラブルを回避できる
- 矯正治療後の抜歯で親知らず抜歯の負担を減らせる
の4つです。
まず、抜歯時には患者さまの身体・心理的な負担が予測されます。
抜歯後に痛みや腫れが出る可能性もあるのでしょう。
さらに、親知らずの抜歯には、
- 下歯槽神経麻痺(かしそうしんけいまひ:唇の一部に痺れが出る)
- 上顎洞穿孔(じょうがくどうせんこう:抜歯時に口と鼻の空洞が繋がってしまう状態)
といったリスクが少なからず存在します。(頻度は多くないので、過度に心配する必要はありません)
また、矯正治療後に抜歯のタイミングを遅らせることで、親知らずの位置がかわり抜歯の難易度が下がることもあるのです。



このように、矯正視点で親知らず抜歯について考える場合は、あえて抜かないほうがメリットが大きいケースもあります。
デメリット
一方で矯正治療時に親知らずを抜歯しないデメリットは、「矯正治療中の歯磨きのしにくさ」が挙げられます。
口の中に矯正器具がつくことで、もともと磨きにくい親知らずに歯ブラシを当てるのがさらに難しくなる可能性があるでしょう。
ただし、
- 歯科衛生士(口腔ケアのプロ)によるブラッシング指導
- 歯医者でのクリーニング
- ご自宅での日々の歯磨き
の3つを頑張っていただければ、親知らず矯正治療中に大きな問題になることはありません。
中には、



矯正前に親知らずを抜歯しないと、後戻り(歯が矯正前の位置に戻ろうとする現象)が起きませんか?
と心配される方もいます。
しかしこちらも、そもそも矯正の治療計画を立てる際に、親知らずが矯正治療後の歯並びに悪影響を与えないことが検査・診断できていれば問題はないのです。
歯並びが変わる親知らずだったら、早く抜いたほうが良い理由


もし検査・診断を受けて抜いたほうがいい親知らずだとわかった場合は、若いうちに抜いてしまったほうが良いでしょう。
なぜなら、加齢と共に
- 骨が固くなって抜きにくくなる
- 抜歯後の傷の治りが遅くなる
などの傾向が強くなるからです。
また女性の場合は、妊娠中に親知らずが痛くなった際に麻酔して抜歯するのが心配なため、妊娠前に抜歯しておくのがおすすめです。
どちらにしても、矯正治療を受ける場合には事前に担当医と
- そもそも親知らずは抜いたほうが良いのか
- 親知らずはどのタイミングで抜くか
についてよく相談してから、抜歯するか否かを検討してみてくださいね!
結論:親知らずで歯並びは変わるケースもある
それでは最後に、親知らずと歯並びについて重要なポイントだけを簡単におさらいしていきます。
親知らずは生え方やアゴの大きさによっては、歯並びだけではなく健康にも悪影響を及ぼす存在です。
一度親知らずによって悪くなってしまった歯並びは、親知らずを抜歯しても治せません。
ただし、必ずしもすべての親知らずを抜歯する必要があるわけではないです。
治療方針や親知らずの状態によっては、抜かないほうがメリットが大きいケースもあります。
とりあえず”抜歯”するのではなく、担当医と治療前によく相談をしましょう!
もし抜いたほうが良い親知らずだと診断された場合には、
- 加齢による抜歯リスクの上昇
- 女性の場合は、妊娠時の親知らずの腫れ
などを考慮して、早めに抜いておくのがおすすめです。
以上、今回は親知らずと歯並びについて紹介しました。
親知らずや歯並びの状態は、個々で大きく異なります。
「矯正」と「親知らず抜歯」の両方について相談したい場合には、
- 矯正歯科
- 一般歯科(口腔外科)
それぞれ専門の担当医がいる総合的な歯医者を選ぶのがおすすめですよ!



本記事で読んでみてもわからない部分がある場合には、個別相談を受けることも可能なので遠慮なくお声がけくださいね!
コメント